私は、数年前に自衛隊を一身上の都合で依願退職しました。
この依願退職には様々なドラマがありました。
退職の意思を上司に伝えてから退職までの間、ものすごい時間と労力がかかり、精神的に病みそうにることもあってたくさんのエピソードがありました。
わたしのこの経験が、これから自衛隊を依願退職する方への参考になれば幸いです。
この記事はこんな方におすすめ
- 自衛隊の退職を希望されている方
- 退職の過程がどのようなものか気になる方
- 自衛隊の退職がなかなか進まない方
Contents
私の自衛官時代の簡単な経歴
細かい部隊経歴を残すと個人情報に触れてしまうので控えますが、どんなスペックの人間が自衛隊を退職したのか気になるところだと思いますので、簡単に経歴をご紹介します。
まず私は海上自衛隊に入隊して航空部隊でパイロットとして十数年勤務しました。部隊での飛行経験は約5年ほど。地上配置も約1年半経験しました。
その後、年齢は30代前半で独身という身分で退職に踏み切りました。
退職の理由
きっと退職の理由はみなさん気になるところでしょう。
このあたりもセンシティブなところなので、やんわり言いますが大きく分けて3つありました。
退職の理由
- 組織の考えに従えなかったから
- この組織に将来性がなく、新しいフィールドでチャレンジしたかったから
- 人間らしい生活をしたかったから
本当は各理由についてお話したかったのですが、問題になりそうでしたので割愛させていただきます。(笑)
自衛隊を辞めるまでの手順(退職の意思を伝えてから受理されるまで)
一般的に会社を退職する場合、1ヶ月から長くても3ヶ月程度かかると言われていますが、自衛隊ではそうはいきません。
私は退職するまで約半年かかりました。これでも最短に近い期間になります。
長いと1年以上かかると言われています。
私の経験を基に、退職の意思を上司に方向してから退職までどう動いたのか、どうすれば効率よく辞められるのかご紹介します。
飛行隊長〜副長まで
さて、私は退職の意思を上司に伝えたのは某航空部隊でした。
この部隊にはまだ転勤したばかりで転勤前の基地では地上職の仕事をしていたので、ここでパイロットの再養成訓練が始まる段階でした。
そこで訓練が終わってパイロットとしての『駒』になってしまった後に退職したいと言ってしまっては部隊に迷惑をかけてしまうので、赴任してすぐに上司に伝えました。
私が所属している飛行隊で上司と呼ばれる隊員は『飛行隊長』と呼ばれる役職の幹部でしたので、飛行隊長に自分が退職をしたい意思を伝えました。
すると隊長は、

とニヤけながら、スタスタとその場を去り、自分の退職意思を真摯に受け止めてくれませんでした。
民間の企業もこんなことってあるのでしょうか。
きっとブラック企業と呼ばれるところはあるのでしょう。
ただ退職に成功した諸先輩方からお話を聞くと、こんなのは序の口ということでしたので、めげすに2度も3度も飛行隊長に話を聞いてもらいました。
それでも話を聞いてもらえなかったので4回目に、『退職届』として文書にして飛行隊長に提出しました。
そこで飛行隊長は重い腰を上げてその上の『副長』に話を通してもらえました。
副長〜隊司令まで
次に立ちはだかったのが、『副長』です。
副長は簡単に言うとその部隊の2番目に偉い人です。
この副長もだいぶ腰の重い人間で3回ほど呼び出されて1回の話し合いに1時間半〜2時間ほどかけて引き止められました。
私が退職する理由は「実家の両親の介護」という理由でした。
※この理由については次回の『自衛隊パイロットから民間のエアラインに転職する方法』のブログでご紹介します。
すると「君の実家に近い自衛隊駐屯地に良い地上配置がある」とか「両親を君の住んでいる官舎に住ませればよい」とかワケのわからない提案をして私をどうにかして辞めさせないように引き止めるのですが、退職の意思は固かったので率直に自分の気持ちを伝え続けました。
そしてようやくさらに上の『隊司令』と面談することになりました。
隊司令〜海幕まで
『隊司令』は、飛行隊や整備隊など様々な部隊を統括する部隊の「長」です。
ここまでくると、隊司令は理解があって2つ返事で受理してくれました。
ここでようやく終了.....
と思いきや、『海幕人事部長』という配置の方との最後の面談があるのです。
これが大きな関門になるとは思いもしませんでした。
海幕への退職意思について
最初に飛行隊長に退職の意思を伝えて、ここまで約4ヶ月が経ちました。
ここで東京の市ヶ谷にある防衛省海上幕僚監部(海幕)に行って最後の退職意思を伝えるのですが、ここまでどれだけ同じ件を言い続けてきたでしょうか。
ここの海幕での面談はこれまでのものとは一味違うものでした。
「海幕人事課」と言う部署にある狭めの会議室に呼ばれて、その密室の中に3名の上級の人事幹部が座っていて目の前に座らされるのです。

そこで退職の理由について事細かく、そして強めの口調で聞かれるのです。
これが1時間ほど。
後半の方では、ここでは書けないような人格否定をするような発言で怒鳴り散らされました。
あんな密室で怒鳴り散らされたのは人生初だったかな...
いや、部隊で何回かあるけど、場所が「海幕」ってだけでビビリの度合いが格段に違いました。。(泣)
心が折れそうで、涙しそうな瞬間もありましたが、必死で「辞めさせてください!」と懇願してようやく受理されました。
受理されてから、退職まで。
ようやく退職が正式に受理されてから、私が所属する基地のトップである群司令に「海幕から退職が正式に受理された旨」をお伝えして、隊内での退職手続きに入りました。
ここまでで約4ヶ月半。
そして退職して完全に基地を去るのに半年かかりました。
退職に時間がかかるのには理由がある!
私は退職の意思決定から退職に至るまで約半年かかりましたが、これは比較的早いほうです。
最速で4ヶ月程度でしょうか。
長いと1年以上かかり、最悪の場合揉み消されてしかも組織に反する行為としてパイロット職を下ろされた後輩もいます。
なぜこんなに時間がかかるのか。そしてなぜこんなに組織が首を縦に振らないのか。
それはその飛行隊や部隊から隊員が辞めると「組織を統括する長(自分たち)の経歴に傷がつくから!」です。
ですので、これまで飛行隊長、副長がこれまで引き止めに必死になっていたのはこの理由です。
すべては自分のため。
そして退職に時間を費やすのは、その「長」(自分たち)が転勤になってしまえば後任の者にその面倒事を押し付けられるから、なんです。
そんな組織の現状を目の当たりにして、さらに退職の意思が強くなりました。
退職を決めるまでに気をつけること
安定した職から本当に離れていいのかよく考える。
そうはいっても国家公務員。
どんな不況でも安定した収入を得られる組織です。
特にこのコロナ禍でどの業界も厳しい現状を強いられていますが、自衛隊は全くその影響を受けません。
安定した職業を本当に離れてもいいのか、今一度考えてから行動しましょう。
退職してからの人生設計を120%考える。
退職してからの人生プランはしっかり考えましょう。
次の仕事のことや就活のプラン、引っ越しのこと、保険のこと、年金のことなど。
そしてこれまでこのような生活面で面倒を見てくれた自衛隊は助けてくれません。
全て自力でやらないといけないのです。
これまで特別職国家公務員という誇り高い立場であったのにいきなり無職になるので、もちろんその精神的な不安な点を考慮して100%以上、120%の準備は必要といえます。
退職理由にブレがないようにする。
この前の項目で各上司、指揮官に退職の意向を何十回も伝えるワケですが、何度も何度も退職の本心を問われます。
主に聞かれること。
「本当は組織に不満があるからじゃないのか?」
「仕事がキツイから辞めたいのか?」
「どうせお前、民間のエアラインに行きたいんじゃないのか?」
などなど。
そして引き止める文言としては、
主に聞かれること。
「実家の近くにある駐屯地の基地の地上職に転勤の調整をしてやろう。」
「ご家族を自分の今住んでいる自衛隊官舎に引っ越させて介護しながら仕事を続ければ良いじゃないか。」
などとどうにか辞めさせたくない、そして自分の都合で家族を故郷から引っ越させるような無茶な提案をしてきます。
挙句の果てには
最終的な投げかけ
「お前なんか民間企業じゃ通用しないよ。」
「自衛隊ほど楽で安定した仕事はないよ。」
「これ以上、退職のことを口にしたらわかってるだろうな!」
とほぼ脅しと言っていいような発言をしてきます。

このような面談を半年〜1年ほど定期的に受けるので、「精神的な強さ」と「退職理由は絶対に曲げないこと」というブレのない芯の強さが必要です。
周りからどんなことを言われてもめげないこと。
当然、退職の意向を示した後は職場には自分が退職する噂が流れます。
そうなると先輩や後輩から「あいつ辞めるらしいよ。」と後ろ指を指される機会が増えてきます。
そしてひどい時だと、先輩から「お前なんで辞めるんだよ、この●●●●が!」と罵声を浴びることもしばしば。

そんな時は聞き流すに限ります。
心の中で「どっちが●●●●だよ、面倒な仕事は後輩に任せて自分は定時で帰るくせに。」と思えばいいのです。
本当はみんなこんな組織辞めたいと思っているのです。
「辞めたい」と勇気を出して本音を出して退職に向かっていることに、周りは僻んでいるんです。
ですので、どんなひどいことを言われても無視する精神的な強さが必要です。
まとめ
昨今では自衛隊、特に海上自衛官の退職者が群を抜いて多いそうです。
こういった現状を知っていただけたら、その理由がわかるでしょう。
そして、最近では防衛省は早期に退職した自衛隊のパイロットに対し、教育・訓練に要した費用の返還を義務付ける「償還金」制度の導入を検討しているそうです。

私は自分を育ててくれた自衛隊には心から感謝しています。
そして国防の最先端を担う自衛隊にも心から敬意を表してますし、日々国民のために勤務する自衛官の皆さまにも尊敬しています。
しかし、この組織体制には疑問が常にありました。
それが大量の自衛官依願退職につながっているのではないでしょうか。
組織体制の大幅な改善をしなければこの状況は変化しないでしょう。
さて、そして私は退職して後悔していないのか。
答えは『YES!!』
辞めて大正解でした。
ここまでご覧いただいて、いかに自衛隊を退職することが大変なのかご理解いただけたかと思います。
そしてこの記事をご覧になっている依願退職希望の現役自衛官の方々もいらっしゃるかと思います。
自力で退職することは本当に大変ですが、プロの退職代行の方に依頼するのも一つの方法であり、より効率的に円滑に退職を進めるためにも有効な手であることは間違いありません。
オススメの退職代行サービスをご案内します。
最後までご覧いただきありがとうございます
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